『ゆずりはの詩』

「雪景色がきれいなのは、雪の下にたくさんの事情を包み抱えているから」

青森の十和田湖畔にある工芸店「暮らしのクラフト ゆずりは」
店主の田中陽子さんが著書「ゆずりはの詩」の中で、
友人から言われた言葉とし語られたこの言葉が、ずっと私の心に残っていました。
   
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雪国で育った私にとって、雪景色の美しさと冬の厳しさは心の原風景
しんしんと降り積もる雪は、いつの間にか森も林も田畑も
時には川の流れさえも真っ白に被い、時間が止まってしまったかのように
感じる時があります。

一日何度も屋根の雪下ろしをしたり、自分の背よりも高い雪の壁と格闘していると
本当にこの雪が溶ける日が来るのだろうかと思うのです。

同郷の文士、会津八一が冬の奈良の空を見て詠んだ和歌

  やまと路の瑠璃のみそらにたつくもは
           いづれのてらのまうへなるらむ


日本海から広がる鉛色の空をあたりまえのように眺めていた北国の冬
私が奈良に来て初めての冬を迎えたとき、いちばん驚いたのは
冬とは思えないような真っ青な空でした。

雪のない冬を重ねるうちに、
鉛色の空も雪景色も遠い記憶となってしまいましたが
「ゆずりはの詩」を読み返しているうちに、少しずつ思いだしたこともあります。

雪の下には、新しい命のエネルギーが静かに蓄えられていて
春がくるのをじっと待っている。
雪に閉ざされ、長い冬をじっと待つ辛抱強さ。

  春を待つ 萌ゆるいのちは 雪の下 (しをん) 

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東北の厳しい自然と向き合う生活の中から生まれた手仕事を
作り手の職人さんを自ら訪ね、実際に仕事を見て話を聞き
その思いを伝えてきた「ゆずりは」の田中陽子さん

田中さんが営んでいらっしゃる「暮らしのクラフト ゆずりは」の展覧会
『東北の恵み、手仕事 〜ゆずりは奈良展』がいま開催されています。
        
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